消費税の課税事業者と免税事業者における仕入・売上の仕訳方法の違い
資本金1000万円未満で子会社などでない新規設立法人の場合、法人を設立後の2年間は、消費税課税事業者選択届出書を提出して希望しない限りは免税事業者にあたる。
これは中小企業に対して消費税に係る事務作業を軽減するための措置である事は以前のエントリで説明したが、それでは軽減された側の法人ではどのように経理を行えば良いのだろうか。
たとえば仕入を10000円分行った場合、それに係る消費税は現状800円であり、相手側には10800円が支払われる筈だ。けれども、自分と相手側も含めて課税事業者であるか免税事業者であるか組み合わせは4通りあるわけで、それぞれの組み合わせで仕訳を異なったものにしなければならないのではないかという疑問が生じる。
売上の場合についても然り。さらにもしこちらが免税事業者であったら、相手方から消費税を徴収できないのではないかという疑問も生じる。なにしろ免税事業者なので、「仮受消費税」という勘定科目は使えないだろう。ゆえに10000円の品物を売り上げたら、10800円徴収するのは不正行為に当たるのではないだろうかなど。
結論を言うと、相手が課税事業者であるか免税事業者であるかの如何に関わらず、自分自身が課税/免税のどちらになるかで仕訳の仕方が異なる。両方のケースについて見てみよう。
課税事業者の仕入/売上仕訳
課税事業者の場合、相手が課税/免税の如何に関わらず、仕入/売上の相手方に仮払消費税/仮受消費税が付いて回らないといけない。こちらも課税、相手も課税の場合は分かり易い。
お互い課税事業者の場合の仕入の仕訳
便宜的に貸方の勘定科目は買掛金を使う。
借方 | 貸方 |
---|---|
仕入 10,000 仮払消費税 800 |
買掛金 10,800 |
お互い課税事業者の場合の売上の仕訳
こちらも便宜的に貸借方の勘定科目は売掛金。
借方 | 貸方 |
---|---|
売掛金 10,800 | 売上 10,000 仮受消費税 800 |
次に相手が免税事業者の場合だが、売上の場合はシンプルに消費税込の金額を請求すれば良い。仕入の場合、相手側が消費税を含まない金額を請求してくる場合がある。その場合であるが、相手の請求金額の中に消費税が含まれていると見なして扱ってよい。
相手が消費税を請求してこない場合の仕入の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
仕入 9,260 仮払消費税 740 |
買掛金 10,000 |
この場合の仮受消費税額740円は、10000*8/108の1円以下端数切り捨てというように求められる。
免税事業者の仕入/売上仕訳
免税事業者では、仮受/仮払消費税といった勘定科目は出てこない。したがって、課税事業者との取引においても、支払った/預かった額の全額を仕入/売上として計上する。
免税事業者の仕入の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
仕入 10,800 | 買掛金 10,800 |
免税事業者の売上の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
売掛金 10,800 | 売上 10,800 |
このようになる。売上の場合に10,000円の売上に対して消費税分を付加して請求しているが、特に問題は無い。むしろ免税事業者は仕入の消費税が戻ってくることはないため、請求しないと損をしていることになる。消費税を付加しない10,000円で請求をすれば、差額の800円分は当方で負担をしていると考える事もできる。
免税事業者が誤って消費税の勘定科目を使ってしまったとき
免税事業者は消費税分を仕入/売上の金額に含めると説明したが、誤ってそれを行わずに、消費税の勘定科目を使ってしまう場合もあるだろう。
その場合は、仮払消費税と仮受消費税の差額を雑収入ないし雑損失として計上する仕訳を行う。
借方 | 貸方 |
---|---|
仮受消費税 800 雑損失 800 |
仮払消費税 1,600 |
免税事業者における課税売上高とは
ただ、こうして消費税分も仕入/売上に含む経理を行っていると、翌々期に課税事業者となるのか免税事業者となるかの基準となる、課税売上高を算出する際に不都合が生じると思われるかもしれない。また、課税売上高はいずれにしろ法人事業概況説明書に記載しなくてはならないため、決算の際に必ず算出する必要がある。
免税事業者の場合の課税売上高は、税込みの売上高をそのまま用いる。したがって、免税事業者が消費税分を分かり易くするために消費税の勘定科目を立てる行為は意味を為さない。
免税事業者であると、このような経理になる。なるほど、消費税をとっていない無人販売所や無人温泉について疑問に感じていたが、おそらく免税事業者なのだろう。そして、「うちは免税事業者なので消費税をいただきません」と案内することは禁止行為にあたるので、利用者は何故消費税分を払わなくてよいのか永遠に悩み続けるわけだね(笑)。
【解決済み】自動販売機の設置により賃貸物件建築時の仮払消費税が取り戻せた問題
消費税の課税事業者と免税事業者の判定方法は前回まとめた通り。設立直後の法人は資本金が1000万円以上であったり大企業の子会社であることが明白であったりしない限りは、課税事業者となるかどうかの基準期間が存在しないため、免税事業者となる。
ただし、消費税課税事業者選択届出書を法人設立時に税務署に提出する事で、第1期から課税事業者となることもできる。今回はこの仕組みを用いてかつて行われる事の多かった、消費税回収テクニックの話。
賃貸物件に自動販売機が付いていると便利なだけでなく…
築10〜15年ほどの賃貸物件を眺めていると、物件に自動販売機がくっついているタイプのものが結構多い事に気付く。入居者へのサービスのためにつけているのかと思いきや、実はこれが今回のテクニックに必要であった道具である。
賃貸物件の家賃収入については、非課税取引、つまり消費税をとる妥当性はあるものの特別なお目こぼしでとられていないタイプの取引にあたる。
つまり、家賃収入のみの場合には、課税売上が発生していない。したがって、仕入時に払った仮払消費税分を、仮受消費税分と相殺して差額の還付を受ける事はできない。
一方、物件に自動販売機を設置すると、自動販売機の売上が課税売上となるので、課税事業者として申請できる可能性が出てくる。ただし、売上の95%以上が課税売上でない場合には、課税売上に対応する部分の課税仕入を算出し、その分との相殺になってしまう(たとえば自動販売機の設置にかかった金額の消費税分など)。そこで、賃貸物件の完成後、第1期を1ヶ月間などの短い期間で取り、その間は入居者を入居させず非課税売上を発生させない。そうすることで、第1期の売上は課税売上のみとなり、95%以上基準を満たすため、課税売上に対応する部分を区分せずに仕入で仮払いした消費税分全額との相殺が可能になる。
そうすると、賃貸物件を建築した際の金額にかかる莫大な消費税から、自動販売機の売上にかかる小額の消費税を引いた差額が手に入るというわけだ。
国によるこの問題への対策
さて、そこで前回のヒキであったような話。国としてはこうした事例を見過ごすことはできなかったため、消費税課税事業者選択届出書を提出した場合2年間は課税事業者でないといけないという縛りをつけることになったわけだ。また、この2年間の内に調整対象固定資産と呼ばれる消費税を含めない価格が100万円以上の固定資産を取得した場合、免税事業者に戻れない期間が取得した事業年度より3年間となる(平成22年4月以降の改定内容)。
加えて、課税事業者において調整固定資産取得から3年間の通算課税売上割合と取得期の課税売上割合が著しく変動したとみなされる場合は、3年間を通算した課税売上割合と取得期課税売上割合との差額を仕入時の消費税分に乗算し、3年目の仕入控除税額に加算または控除しなければならなくなった。
迂遠な穴の塞ぎ方がされているもので、消費税にかかる事務処理を増大させているような気がするが。とりあえず課税事業者で100万円以上の固定資産を取得した場合には、こういったことの考慮もしておかなかければならない。
消費税の課税事業者と免税事業者の判定方法
消費税に関して、法人には課税される事業者(課税事業者)と、免税される事業者(免税事業者)の2種類がある。原則的存在が課税事業者で、免税事業者というのは中小企業などの事務の煩雑化を避けるための特例的措置である。したがって、免税事業者でも事業規模が大きくなってくるとこの特例的措置が解消され、課税事業者へと移行しなくてはならなくなる。課税事業者が原則、免税事業者は特例。ゆえに課税事業者であるかどうかの判定方法には、特例に逃げ込もうとする大規模企業を追い出すための、細かい基準が付いて回る。
課税事業者と免税事業者の判定方法
消費税課税事業者選択届出書の提出の有無
まず、先述のとおり免税事業者は特例という扱いなので、特例が要らないというのであれば、売上高の大小に関わらず期首の前日までに希望することにより課税事業者となることができる(所轄の税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する)。特例の返上という形ではあるが、期間中の仕入や設備投資が多く見込まれる場合、場合によっては課税事業者である方が得であることもあるから、返上した法人が必ずしも殊勝というわけではない。
基準期間における課税売上高(前々年・前々期)
特例的な免税事業者になれるかどうかは、課税売上高が1000万円を超えるかどうかで決まる。課税売上高とは、総売上高から不課税取引売上高と非課税取引売上高をのぞいたもの。どういったものが不課税・非課税なのかは以前のエントリに書いた。
課税売上高が1000万円を超えないのであれば、中小企業とみなされ、免税事業者の資格を得る。問題はいつの課税売上高が基準となるかであるが、個人事業主であれば前々年、法人であれば前々期の課税売上高が基準となる。前年や前期を基準とすると、事業年度が始まったタイミングでその年度が課税なのか免税なのか知ることができないので当然とも言える。
ちなみに、法人の設立1期目など、基準となる事業年度が1年に満たない場合は、1年分に換算して算出する。たとえば1期目が6ヶ月ならば、3期目に免税事業者となるかどうかの判定は、1期目の課税売上高を2倍した額と1000万円を比べる。
特定期間における課税売上高もしくは給与支払等合計額
前々期を基準とする場合、急激に課税売上高が上がった企業からの税金の取りはぐれが生じる。ということで、そうした穴を塞ぐために平成25年1月1日以降開始する事業年度については、基準期間に加えて特定期間の課税売上高も判定の基準に加えなければならなくなった。特定期間とは、個人事業主の場合前年の1月1日から6月30日までの期間。法人の場合前年の事業開始日から6ヶ月。この期間の課税売上高が1000万円を超えるようならば、免税事業者になることはできない(なお、期間が7ヶ月以下の事業年度からは特定期間をとらないので、設立1期目を7ヶ月以下にすると、2期目は特定期間による判定を免れることができる。この穴もその内塞がれそうではあるが)。
ただし特定期間による判定については、課税売上高の他に給与等支払額の合計額を基準とすることもでき、課税売上高が1000万円を超えているようでも、給与等支払額合計が1000万円以下であれば、免税事業者資格を得られる。
新設事業者の場合の原則と資本金等による判定
新設事業者の場合、基準期間にあたる前々年・前々期が存在しないため、自動的に免税事業者の資格を得る。また、2年目・2期目についても、先述の特定期間の縛りに引っかからない場合は免税事業者で居続けられる。
ただし、これにもまた例外がある。新設事業者の資本金が1000万円以上である場合と、新設事業者にとっての基準期間において課税売上高が5億円を超えている事業者が、新設法人の株式の50%以上を直接または間接保有している場合。前者はともかく、後者は新法人設立による税金逃れを狙い撃ちする判定基準であり、一般的にはあまり意識する必要が無いものだろう。
ベンチャー起業などでは、あえて資本金を1000万円未満に設定することで、第1期から課税事業者となることを避けることがよく行われている。
消費税課税事業者選択届出書の注意点
特例は要りませんという意思表示のための消費税課税事業者選択届出書であるが、これを提出してしまうと最低2年間課税事業者であり続けることが求められる。どうしてそういう規則ができたのかというと、これもやはり税金逃れの穴を埋めるためであったりする。どういった穴だったかについては、次回あたりトリビアとして紹介しよう。
税金逃れを試みる事業者が多いせいで、判定方法からなにから複雑になっているのである。と、先達への恨み事を言いつつ。
消費税率8%への改定に伴う各種給付金や減税について
長らく続けて来た消費税トリビアだが、そろそろ終わりにして起業ブログに戻りたいところ。というわけで、最後のトリビア。2014年4月1日からの消費税率引き上げに伴い、消費傾向に各種影響があるだろうとの懸念から、補助金や減税といった各種政策が予定されている。各々対象になるかどうか是非チェックしておこう。
子育て世帯臨時特例給付金
子育て世帯臨時特例給付金は、平成26年1月1日において児童手当の対象となる世帯(子供が中学3年生以下)で、児童手当の所得制限に引っかからない世帯の児童1人につき1万円が支給されるというもの。ただし、後述の臨時福祉給付金の対象者ならびに生活保護の非保護者は対象外となる。
平成26年1月1日時点に在住の市区町村に申請することで、1度のみの支給を受けることが出来る。申請受付開始は大体6月以降となるが、各市町村毎に異なるので、自治体広報などをチェックして見逃さないようにしなければならない。
(参考リンク:厚生労働省)
臨時福祉給付金(簡素な給付措置)
臨時福祉給付金(簡素な給付措置)までが正式名称である。所得が低く、平成26年度分の市区町村民税が課税されない対象者1人につき1万円が申請により支給される。また、支給対象者でありかつ老齢基礎年金や障害基礎年金、遺族基礎年金、児童扶養手当、特別障害者手当等受け取っている場合には5千円が加算され、1人あたり1万5千円の支給となる。
平成26年1月1日時点に在住の市区町村に申請することで、1度のみの支給を受けることが出来る。申請受付開始は大体6月以降となるが、各市町村毎に異なるので、自治体広報などをチェックして見逃さないようにしなければならない。
(参考リンク:厚生労働省)
すまい給付金
引き上げ後の税率が適用される住宅取得(登記上の持ち分を取得し自ら居住する場合)について、入居完了後にすまい給付金事務局に申請すれば現金を支給する。住宅事業者による申請手続きの代行も可能。対象となるのは、平成26年4月から平成29年12月までの取得で新築・中古を問わず支給されるが、給付要件が細かく給付金額も異なってくるので、詳しくは国土交通省のすまい給付金特設ページを参照。
(参考リンク:すまい給付金)
こちらは既に申請受付が始まっている。
住宅ローン減税制度
消費税引き上げの影響を鑑みて、既にあった住宅ローンの減税制度の対象を拡充する。平成26年4月から平成29年12月までに引き渡される住宅が対象で、最大控除額がこれまでの20万円/年から40万円/年へと倍増する。実際のところは40万円と、住宅ローン残高の1%と、所得税額+控除対象住民税額のうちで最も少ない額が控除されることとなるので、最も恩恵を受けるのは高額所得者になるわけだが、その辺りの不公平について補うのがすまい給付金ということになる。
参考リンクはすまい給付金に同じ。確定申告時に申告書類を提出して申請する。
増税に係る給付金・減税制度ということで一緒くたにされがちだが、それぞれ申請方法や申請受付期間が異なるため、どうも情報が錯綜しており、早く動かないと取りはぐれるといったイメージが蔓延しているように思う(秦野市でもそういったイメージの打ち消しに躍起になっているといったことは、別ブログで触れたとおり)。
なんで申請式の面倒臭い方式になっているかといったら、仕事を作って天下りの団体を潤したいためではないの?と思ってしまう。庶民としては頭を下げて、数万円の給付金に対して心よりの感謝を表明しなければならないかな。
消費税増税分の使途と、福祉目的税化の意味
4月1日からの消費税率改定。増税分税率の国税と地方税への振り分けについては前回解説した。このうち、地方税に振り分けられる分については、新たに使途が限定されている。まずはそちらから見ていこう。
地方税増税分の使途
今回の消費税増税は、社会保障施策を行うためという名目のものだ。そのことを象徴するかのように、地方税における増税分の使途が限定されている(これまでは、国税分のみ目的税化されていた。後述)。これまでの税率分、つまり国地方合計税率5%における地方税分1%については従来通りの一般財源で構わないが、8%税率時の地方税増税分0.7%、10%税率時の地方税増税分1.2%について、用途は社会保障4経費ならびにその他社会保障施策に充てることと定められている。
社会保障4経費とは
- 年金にかかる経費
- 医療にかかる経費
- 介護にかかる経費
- 子育てにかかる経費
増税分の市区町村への交付基準が、従来分と異なり人口数比率のみを基準とするということは前回既に説明したと思う。税金を発生箇所に公平に還元するのではなく、社会保障経費として集めた富の再配分を行っていることになる。
消費税の国税分収入の使途
消費税の国税分収入について、これまで5%税率においては、うち29.5%が地方交付税の財源のひとつとして充てられ、残りの70.5%の使われ方が社会保障予算として限定されていた。実は先程出てきた単語、社会保障4経費であるが、元はと言えば4経費から子育てを除いた、高齢者3経費と呼ばれていたものだ。国税消費税の使い道を高齢者3経費に限定するというのが、1999年の予算総則以降加えられたものであり、消費税は元々一部ながら福祉目的税化を果たしていた,ということになる。
ちなみに、消費税率の改定にしたがって国税分における地方交付税分割合も変動することとなる。
改定時期(国税分税率) | 地方交付税割合 | 国税分×地方交付税割合 |
---|---|---|
平成元年4月(3%) | 24.0% | 0.72% |
平成9年4月(4%) | 29.5% | 1.18% |
平成26年4月(6.3%) | 22.3% | 1.40% |
平成27年4月(6.3%) 平成27年10月(7.8%) |
20.8% | 1.47% |
平成28年4月(7.8%) | 19.5% | 1.52% |
たとえば平成28年4月以降に10000円の品物を購入したとすると、消費税の地方交付税分として152円が充てられるということになる。
"スキマ"がある現状消費税自体の目的税化に意味は無い
さて、地方交付税を除いた分の国税消費税は現在でも社会保障の経費に充てられているということだが、たとえば平成25年度の予算の場合、国税消費税分7.5兆円の収入に対して、高齢者3経費の合計支出が17.8兆円となっている(参考資料:消費税の使途:財務省)。つまり、消費税収入だけでは圧倒的に足りていない。そこで、必要分の支出と収入の差額の部分を他の財源からまかなっているという状況になっている(特例公債など)。ちなみに財務省の資料などでは、この不足分を"スキマ"と表現している。
消費税が10%まで上がると、この"スキマ"が果たしてどうなるのかということだが、10%まで税率が上昇した後の平成29年度の試算で、国と地方合わせた社会保障4経費の合計が44.5兆円。国税消費税税収は25.2兆円、差額は19.3兆円になる。差額が広がる要因には、新たに社会保障の充実のための2.8兆円が必要経費として見込まれること、消費税引き上げに伴う経費増0.8兆円が生じること、年金国庫負担1/2等で3.2兆円が見込まれることなどが挙げられる(参考資料:社会保障・税一体改革による社会保障の充実:内閣官房)。
消費税の引き上げで増える税収分が14.0兆円であることを考えると、新たに増える経費を差し引いて7.3兆円分が、スキマの穴埋めに使われる。7.3兆円には資料の図表で"後代への負担のつけ回しの軽減"という題目がついているが、要するにこれまでスキマを埋めるために行った特例公債の発行は、後代への負担のつけ回しにあたるため、公債発行を置き換えるこの7.3兆円部分は福祉目的ですという宣言に他ならない。
もちろん、浮いた部分にあたる公債を、他の目的のために使用することも可能だろう。その可能性について消費税の福祉目的税化が制限することはない。つまり、スキマがあることで、公債発行を置き換える増税について"後代への負担のつけ回しの軽減"という"福祉目的"を適宜用意することが可能になったのである。
"スキマ"論法での増税が今後もあるのではないか
今回降って湧いた高齢者3経費の社会保障4経費化であるが、今後社会保障5経費、6経費、と目障りな必要経費を全て社会保障経費の名目に参入してしまうことで、目的税となった消費税でそれらをまかなわなければならないという論調を吹かせつつ、他の財源や公債の使途についてはくびきを断ち切っていくことができるだろう。
また、増税の動機となる切迫感の演出もし易い。膨れ上がっていく社会保障経費の棒グラフを見て、国民は「仕方が無い」との気にさせられてしまうのではなかろうか。