増税により変動 消費税における国税/地方税の割合
消費税率改定による負担増を実感することで、消費税についての興味が俄然湧いてきた。あくまでトリビア程度ではあるが、消費税の仕組みについてまとめていこう。
消費税における国税と地方税の割合
消費税というのは、財源として景況変化等の影響を受けにくく、コンスタントな収入源となり得るということで、徴収する側にとってはたいへん都合の良い徴税方法である。徴収した消費税は、国の取り分と地方自治体の取り分に山分けされる仕組みとなっている。この仕組みになったのは、平成9年4月の5%税率導入時であるが、今回の消費税率改定ならびに平成27年10月1日以降の改定で、その割合についても多少の変動があるようなので、まとめておこう。
改定時期 | 国税 | 地方税 |
---|---|---|
平成元年4月(3%) | 3% | 0% |
平成9年4月(5%) | 4% | 1% |
平成26年4月(8%) | 6.3% | 1.7% |
平成27年10月(10%) | 7.8% | 2.2% |
改定後の地方税の割合については、改定前割合5分の1を僅かに超えて、取り分が多くなっている。10%というキリの良い数字においてもそうなっているため、地方税分をやや多くというのは、意図的なものであろう。
地方税分の意義は、改定税率導入の円滑化なのか
消費税における地方自治体取り分は、平成9年の消費税率5%導入時に突如として登場している。今後また税率の引き上げがあり、強い反発が見込まれれば、地方税割合は上がっていくのではないかと思われる。言ってしまえば、各方面からの反発をなだめすかす配慮だ。または、共犯関係の強要というべきか。地方自治体が怠慢なく常に行っていなければならない仕事であるところの、国からの予算追加要望にこたえますよというわけだから、反対の声も上がらない。
消費税については、そもそも目的税ではないということで相当後ろ暗い。それはまた別の話なので、次の機会にまとめよう。
地方税分の配分方法
徴収した消費税のうちの地方税分は、消費関連の統計調査などを用いた「清算基準」に基づき、各都道府県に配分される。納税は消費税を仮受した企業の本店所在地/事業所所在地で行われるため、再配分を行わないと東京やら大阪やら、本社が多く所在する都道府県の収入が不当に多くなってしまう為だ。
清算基準は具体的には以下のとおり。
基準 | ウェイト |
---|---|
商業統計による「小売年間販売額」と、 サービス業基本調査による「サービス業対個人事業収支額」の合算額 |
75% |
国勢調査による「人口」 | 12.5% |
経済センサス基礎調査による「従業者数」 | 12.5% |
清算基準については、見直しが計られているとか、計られる必要性があると提案の段階であるとかで。基準の策定においても、いくらでも意図が介在する余地があるわけで(長らく見直しの要望が挙がっていた清算基準の改善に尽くした結果、偶然A県さんの取り分が少なくなってしまいましたね?)、地方自治体はおいそれと消費税増税を含めた国政の取り決めに異を唱えられないのではないかと思える。
各都道府県に配分された消費税の内の2分の1は、さらに下部の市区町村に配分される。このときの基準は、「交付基準」。
基準 | ウェイト |
---|---|
「人口」 | 50% |
「従業者数」 | 50% |
(従来分)とあるように、従来の税率での消費税収入は、継続して人口と従業者数を加味した交付基準となる。一方、増税分の消費税収入には社会保障財源に使うという建前がついてるため、人口のみを交付基準として市区町村に配分する。どこから見ても今回の増税は社会保障拡充目的に見えるね。
消費税増税がもたらす目に見える効果
地方消費税の仕組みについて色々と調べ感じたのは、消費税増税の一番目に見える効果というのは、地方自治体に対する国の手綱が太くなることではないかと。景気の変動に連動せず、一定した税収になるわけだから、増税の結果景気が悪くなろうが関係ない。むしろ悪くなってくれると、必然手綱の比重は上がる。
地方自治体側としては、税制が変わったり清算基準が変わったりで取り分が少なくなったら、そこに国政の意図があるとして奮起し、議会で時間をかけて要望をとりまとめ、逆側への利益誘導をはかるわけか。たいへんな仕事もあるものです。
消費税の不課税・非課税・免税それぞれの違い
無人公衆温泉に入浴する際の心付けが消費税の課税取引に当たるのかなど少し気になったところというエントリ内での、言葉の使い方が結構あやふやだったので、自戒のためにもその辺りの使い分けをトリビアとしてまとめておく。
事業者が行う取引には、その取引が消費税の対象としての妥当性があるかという点において、課税取引・不課税取引・非課税取引・免税取引の4種類があり、それぞれが指し示すものは異なる。勿論課税取引以外の取引は消費税がかからない(ように見える)取引であるのだが、消費税がかからないことの根拠により呼称が異なるようだ。各々のものについて解説していこう。
不課税取引とは
不課税取引とは、取引の性質上、消費税を取ることが妥当でないもの。消費税の原則は、対価性のある国内での取引に対して課されるというものであるので、たとえば贈与や無償提供などの対価を伴わない取引や、社員への給与支給、税金の支払い、株式配当金の支払いなどでは消費税が課されない。また、国外での取引についても、日本の消費税を課す妥当性は無いため、不課税取引となる。
非課税取引とは
それに対して、非課税取引は取引の性質上消費税を取る妥当性はあるものの、課税の対象とすることが政策的にそぐわないため、非課税と決められている取引。政府によって特別にお目こぼしがされている取引というわけだ。具体的には、土地・有価証券・商品券などの取引、預貯金利子や社会保険医療など。
免税取引とは
免税取引も、一見消費税をとる妥当性がある取引であるけれど、取引相手が海外で、譲渡した資産・サービスが海外で消費されることが確定的であるもの。つまり、輸出取引やそれに準ずるものがこれに当たる(一方、輸入取引の場合は国内で消費されるため課税対象である)。これには消費税が発生しているのだが、その税率を0%としているため、見た目上では課税されていないように見える。
消費税の納税額算出時における違い
消費税の納税額を算出する方法には、原則課税方式と簡易課税方式の2つがある。どちらの方式においても、課税売上高を算出する必要があるのだが、この課税売上高に不課税取引と非課税取引の売上高は含まれない。簡易課税方式の場合、算出された課税売上高に消費税率をかけた値に、(1 - みなし仕入率)をかけた値が納税額である。原則課税方式の場合、基本的には課税売上高に消費税率をかけたものから、課税仕入等の総額における課税売上に対応する部分を算出し(算出法は個別対応方式と一括比例配分方式の2種類ある)、消費税率をかけたものを仕入控除税額として引いて求める。ただ、課税売上高と非課税取引売上高の合計が課税売上高の100/95を超えず、また課税売上高総額が5億円を超えない場合は、課税仕入等の総額にそのまま消費税率をかけたものを仕入控除税額として使える。
後半の解説に関しては、トリビアでもなんでもないような気がするので、不課税・非課税・免税の違いだけならば、消費税がかからない根拠が違う程度に覚えてムダ知識として使えば良いだろう。で、言いたかったことは、料金箱に入れる心付けがチップならば、非課税取引ではなく、不課税取引扱いだよねということだ。
4月1日から、領収書発行時の印紙税課税範囲が5万円以上からに変更
この4月1日からの変更。領収書を発行する際に、3万円以上の金額になると発行側が印紙税を収めないといけないということは、比較的広く知られていることだと思う。具体的には、領収書に収入印紙を貼り付けることによってそれが行われる。
2014年3月31日までに作成される領収書の課税金額
現在のところ、印紙税の課税金額は以下のとおりになっている。
売上金額 | 課税額 |
3万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円以上200万円以下 | 400円 |
200万円以上300万円以下 | 600円 |
300万円以上500万円以下 | 1000円 |
500万円以上1000万円以下 | 2000円 |
1000万円以上2000万円以下 | 4000円 |
2000万円以上3000万円以下 | 6000円 |
3000万円以上5000万円以下 | 10000円 |
5000万円以上1億円以下 | 2万円 |
1億円以上2億円以下 | 4万円 |
2億円以上3億円以下 | 6万円 |
3億円以上5億円以下 | 10万円 |
5億円以上10億円以下 | 15万円 |
10億円以上 | 20万円 |
売上代金以外の場合には、3万円未満が非課税、3万円以上が一律200円となっている。
2014年4月1日以降に作成される領収書における課税金額の変更
変更点は、売上金額3万円未満が非課税であったところ、これが5万円未満非課税に課税範囲が緩和される。また、売上代金以外の場合でも、一律課税範囲が5万円以上からに変わる。
その他の作法の変更は特に無い。収入印紙に割印が必要であること、課税されるべきものに課税額を払わなかった場合、過怠税として本来の3倍の額を納付しなくてはならなくなること等。
小売りなどの場合でも、レジ担当者への再教育が必要になるだろう。
無人公衆温泉に入浴する際の心付けが消費税の課税取引に当たるのかなど少し気になったところ
今回は起業とは少し離れた余談。
本家ブログで消費税増税により値上げする温泉施設・銭湯について記事を書いた。その際に気になったのが、地方によくある入浴時に100円程度の心付けを入れるタイプの温泉。このタイプの場合、課税取引になるのか非課税取引になるのかということ。また、この温泉の売り上げに入湯税はかかっているのかということ。
問題がややこしくなってしまったので、一つ一つ分けて考えよう。
無人温泉は入湯税の徴収対象なのか
入湯税というのは、鉱泉に入浴する利用者から徴収する税金で、鉱泉源の保護や消防施設の維持に宛てられる目的税。市町村が徴収額を決定し徴収、入浴料の如何に関わらず固定額となる。
入湯税については、大体の相場が1日1人あたり150円と記憶していた。したがって入浴料100円に設定した温泉の場合、足が出てしまうのではないかという疑問が大きかったわけだ。
ところが、よくよく調べてみると、日帰り入浴の場合に市町村によってまた別の徴収額が設定されている場合がある。たとえば大分県の日田市の場合、宿泊入湯客が150円、日帰り入湯客が50円。さらに、利用料金400円以下の場合は入湯税が課されない(日田市公式ウェブサイト)。
入浴料金が安い印象のある別府市の場合、日帰りと宿泊で区別をしているわけではなく、利用料金で段階的に定額課税を行っている。2000円以下の場合50円、4500円以下の場合100円、4501円以上の場合150円。そして特例で、娯楽施設を有する場所においては40円、共同浴場または一般公衆浴場の場合非課税(別府市公式ウェブサイト)。竹瓦温泉など、立派そうな建物の温泉であっても、共同浴場に当たるから入湯税を徴収していないわけか。
つまり、入湯税というのは完全に市区町村の裁量によって決まるわけで、少なくとも料金の安い無人浴場などの場合には、非課税の可能性が高い。
そもそも入湯税を徴収する場合には、利用者数を把握する義務が出てくるわけで、逆に考えるならば、入湯税が課せられるならば無人温泉は業態として不可能になる。
無人温泉の入浴料に消費税は課税されるのか
無人温泉の料金箱に書かれている文言自体は、あまり一定していないように思われる。素直に「入浴料」と書いているところもあるし、「お心付け」とか、「協力金」、「施設維持料」などのタイプもある。
「心付け」と捉えるならば、チップと同じ基準が採用されるため、非課税である。チップが非課税になるのは、それがサービスに対する対価として明白な関係がないため(国税庁ウェブサイト)。
「協力金」などの場合にも、寄付金等にあたるため非課税取引だろう。ただ、「入浴料」などと箱に書かれて徴収されている場合、どのようになるのかは依然疑問だ。野菜の無人販売所など、明確に「料金箱」と書いているけれど、105円とか半端な支払いを強いている所は見た事がない。そこのところもどうなのか。無人販売を行っている農家は全て免税事業者なのか。あるいは、本業とは別の個人取引の売り上げとして計上しているのだろうか。
気になることは尽きない。
納税時期が事業年度に関わらず設定されている税 固定資産税
法人が払わなくてはいけない税金の内、いくつかの税は納税時期が法人の事業年度に依存する。たとえば基本的な法人税(国税・法人住民税・法人事業税)や、消費税。一方、法人の事業年度に関係なく発生し、納付しなくてはならない税金もある。たとえば前回触れた自動車税などは、事業年度が如何に関わらず4月1日に賦課され、5月中には納めないといけない。
固定資産税も、同様に納税時期が事業年度に依存しない。1月1日時点の固定資産の評価額が課税標準となり、納付時期は6月に一括ないし6、9、12、2月の4回に分けての納付となる。
固定資産の評価額は、法人の自己申告ではなく土地建物の登記を元に国や地方自治体が決定し、通告される。もし額に不満がある場合は、固定資産評価審査委員会に審査を要求することができる。
固定資産税の対象となるのは、土地や建物などの固定資産の他に、土地建物に付随する構築物や生産設備などの償却資産も含まれる。そして、この償却資産については法人が1月1 日時点の所有資産をもとに、償却資産税申告書で地方自治体に自己申告しないといけない。自己申告の期限は1月末日で、納付時期は固定資産に同じく。
IT企業の場合、PCや周辺機器、OA用品などは生産設備に当たり、償却資産として申告の必要がある。一方、ソフトウェアなどの無形減価償却資産は償却資産に当たらない。